金型無償保管問題①
今月(2024/11/21)住友重機械ハイマテックス株式会社が下請法の勧告を受けました。
概要は以下の通りです。
住友重機械ハイマテックス株式会社(以下「住友重機械ハイマテックス」という。)は、自社が販売する圧延用ロール(注1)の部品の製造に用いる金型又はマリンチェーン(注2)の部品等(以下「金型及び部品」という。)の製造を下請事業者に委託しているところ、遅くとも令和5年4月1日から令和6年7月末日まで、金型等を用いて製造する金型及び部品に関して、下請事業者5名に対し、次回以降の発注の有無又は次回以降の具体的な発注時期の見通しを示すことができないにもかかわらず、引き続き、合計178個の金型等を無償で保管させることにより、下請事業者の利益を不当に害していた。
住友重機械ハイマテックスは、令和6年4月から同年9月までの間に、前記178個のうち、下請事業者1名に貸与していた合計119個の金型等を回収している。
住友重機械ハイマテックスは、下請事業者5名に対し、協議を行い見積書を徴収した上で、令和6年7月24日までに、無償で金型等を保管させていたことによる費用に相当する額として総額319万6723円を支払っている。
(注1)圧力を加えて鋼材を薄く引き延ばす工程で用いる円柱状の部材。
(注2)艦船及び浮標(航路標識)の係留に用いる鉄製の鎖。
下請事業者の生業は保管業ではない
本件は金型を無償保管させたということで、第4条第2項第3号(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)に該当するということで、親事業者の住友重機械ハイマテックスは保管料を支払いました。
総額319万6723円÷119個÷16カ月=1,678円 これがひと型ひと月当たりの保管料となります。
金型を使用して部品を生産する下請事業者は金型を保管することを生業としていません。
スロームーブになって次の注文がいつ来るか分からない金型が場所を占有し、新しい製品の引き合いが来ても金型を置くスペースが無ければ、新規案件を受けられません。
下請事業者は保管料が欲しいのではなく、その金型を使用した製品の注文が欲しいのです。
使わない金型は引き取る、これが下請事業者の一番のお願いです。